今日サイトの総合的な最適化がますます重要になっています。私もSEO中心の発想から抜け出し、より広範な視点からウェブ・マーケティングを見るように心がけるようにしていますが、課題は山積しており、自分の中でもどこから手をつけようか、あるいは手をつけたはいいけれど、どう整理していこうかと試行錯誤を繰り返しています。

とりわけユーザビリティやIA、LPOといったものはSEOと密接な関係にありますから、SEOとの兼ね合いも考えつつ、それらをどのように制作中のウェブサイトに適合させていくかという問題は私にとってとても重要です。

今回紹介する「Usability Testing and Online Marketing Campaigns(ユーザビリティ・テストとオンライン・マーケティング・キャンペーン)」はユーザビリティとSEOを専門的に扱うW Craig Tomlin氏によって書かれたもので、ページを効率よく最適化するためにユーザビリティ・テストを導入することを呼びかけています。

キャンペーンへとオンライン・マーケティングが広がっていく中で、効率のよいランディング・サイト/ページの最適化はますます重要になっていますし、費用対効果を増大させることは必須の課題となっています。Tomlin氏の意見に全面的に賛成するかどうかは別として、一読の価値はあると思います。簡単にまとめつつ、記事の内容を紹介していきたいと思います。

ユーザビリティ・テストとオンライン・マーケティング・キャンペーン

Tomlin氏の主張を簡単にまとめると、ユーザビリティ・テストはたいていウェブサイトやウェブ・ベースのアプリケーションの改善のために実施される手法だが、これをオンライン・マーケティング・キャンペーンに用いることができる。それによって、効果検証に費やされる時間と予算を抑えて、ROI(投資収益率)を増大させ、より早く効果に繋げることができるし、一方でローンチに伴うリスクを軽減することに繋がる、というものです。

また彼はオンライン・マーケティングの最適化をすることで、伝統的なマーケティングに対してと拡大しつつあるオンライン・マーケティングへの取り組みの必要性と、オンライン・マーケティングの中で激化する競争に対抗していかなければいけないことを挙げています。

Tomlin氏のいうユーザビリティ・テストの目的とは次に挙げるような項目をユーザーが容易に、且つ迅速に行えるよう対象のサイトないしページを最適化していくことです。

  • オンライン広告のメッセージを理解すること
  • ランディング・ページへ容易にクリック・スルーすること
  • 素早くランディング・ページのフォームを埋めること
  • 製品を購入するために購入フローにおいて、データ入力を効率よく行うこと

ユーザビリティ・テストを追加する理由

Tomlin氏はオンライン・マーケティングを最適化するためにユーザビリティ・テストを追加する理由として次の3点を挙げています。

1. ユーザビリティ・テストは手早く、容易である

ユーザビリティ・テストは時間や努力あるいは情報のインプットを効率的にする可能性を秘めています。オンライン・マーケティング・キャンペーンのように、場合によっては期間がかなり限定されているものに対し、「何千もの統計的に重要なレスポンスや複数のフォーカス・グループ」を獲得、あるいは設定するのは容易ではありません。事前に行うユーザビリティ・テストはこれに費やされる時間や費用を節約します。

Tomlin氏は7人のテスト参加者を想定して話を進めていますが、この参加者によって、ランディング・ページへのクリック・スルー、ページ上に書かれたメッセージの理解、フォームの入力、注文や購入経路のナビゲーションなどをテストすることで、問題点を事前に洗い出すことができるだけでなく、非常に多くのサンプルを解析するより、手早く的確に改善へ向けてのアイデアを手にすることができます。

2. ユーザビリティ・テストは安価でリスクが少ない

ユーザビリティ・テストのセッティング、テスト参加者の募集、彼らの行動の観察、彼らからの報告といったテストに関する一連の作業は、最小限のコストで1週間以内に終えることが可能だというのがTomlin氏の主張です。

わずか7人にゴールに辿り着くまでのテストを行うことは、実際のキャンペーンにおいて何百ないし何千という潜在顧客の体験をデータ上で追いかけ、例えばA/Bテストを同時に行うことに比べれば、はるかに費用を抑えることできますし、同時に、実際のキャンペーンで「劣ったBバージョンによって注文や売り上げを損なう」ことを事前に防ぐことにもつながります。また、それによって出来の悪いキャンペーンを展開するリスクを軽減することができます。

3. ユーザビリティ・テストは実際のターゲットである潜在顧客を使う

このユーザビリティ・テストは、実際にターゲットにしている人びとを使って行うことで、より効果的になります。

これは改善へと繋がる実際のターゲット層からのフィードバックを事前に手にすることに繋がりますし、A/Bテストからは簡単には得られない生のユーザー行動に触れ、分析することで、予め「当て推量(guesswork)」を取り除くことができます。

オンライン・マーケティング・キャンペーンにおけるユーザビリティ・テストで行うべきこと

ユーザビリティ・テストで行うべきことを全て挙げていくときりがありません。しかし、いくつかの決定的な要素に絞ってテストすることで正しく効果を導くことができます。Tomlin氏はその決定的な要素として次の4つを挙げています。ここは全て原文通り訳すことにします。

  1. Call to Action Function – Conducting a usability test of an online advertisement with a call to action button is a quick way to determine if your call to action graphic is doing what it’s supposed to. Does the test participant see the graphic in context with other ads or content? Does the button look like a button and stimulate response? What does the participant expect to see after they click the button? Usability testing will provide all those answers, and more.

    行動喚起機能 ― 行動喚起のためのボタンのあるオンライン広告のユーザビリティ・テストを実施することは、あなたの行動喚起のためのグラフィックがしかるべき役割を果たしているかいるかどうかを決定づける迅速な方法である。テスト参加者は他の広告ないしコンテンツとともに、文脈の中でグラフィックを見ているだろうか。ボタンはボタンのように見え、反応を促しているだろうか。参加者がボタンをクリックした後で目にするのを期待しているのがどんなものなのか。ユーザビリティ・テストはそれら全ての答えとそれ以上のものを与えるだろう。

  2. Landing Page Content and Information Architecture – Once your prospect is on your landing page, does the content meet their expectations? What about the information provided, is it clear and easily understood? Does the participant know where to go, and what to do next?

    ランディング・ページのコンテンツと情報アーキテクチャ ― ひとたびあなたの潜在顧客がランディングページに辿り着いたとき、そのコンテンツは彼らの期待に沿っているだろうか。情報が与えているのはどんなもので、それは明確かつ容易に理解されるものだろうか。参加者はどこに行き、次に何をするかを知っているだろうか。

  3. Order or Buy Flow Form Function – Assuming you have a form on your landing page, is it easy to use? Does the participant make any mistakes, or have confusion when entering data? How long does it take to enter the data? Are there too many fields, or not enough, from the participants viewpoint?

    注文/購入フローのフォーム機能 ― あなたがランディングページにフォームを持っていると仮定して、それは使うのが容易だろうか。参加者はデータ入力時に誤ったり、あるいは混乱していないだろうか。データを入力するのにどれくらいかかっているのか。参加者の視点から見てフィールドが多すぎないか、あるいは不足していないか。

  4. Next Steps – After completing the form, does the participant know what will happen next? What are the participant’s expectations? Does the participant receive their expected feedback? Are they satisfied with the experience?

    次のステップ ― フォームを完了した後で、参加者は次に何がおこるか知っているだろうか。参加者の期待は何だろうか。参加者は彼らの予測したフィードバックを受け取っているだろうか。彼らは体験を満足しているだろうか。

結論において、Tomlin氏は「オンライン・マーケティングの取り組みにユーザビリティ・テストを加えることは、退屈なオンライン・キャンペーンを決定的なマーケティング・キャンペーンの地位へと持ちあげる助けとなる」と主張しています。それは「全てが意見ではなく、作業に関することだからであり、それが安価で、リスクが少ないからであり、加えて、それが実際のターゲットである潜在顧客を、流れの中で問題がどこにあるのかを確認するために用いられるから」です。

オンライン・マーケティングを成功させるために

以上、オンライン・マーケティング・キャンペーンにユーザビリティ・テストを追加するための手法を、Tomlin氏の主張に沿って紹介してきました。

個人的に、ユーザビリティ・テストに全幅の信頼を寄せるのは、それはそれで危険だと思いますが、ある程度期間と予算が限られているキャンペーンなどの場合、事前にターゲット層にテストに参加してもらい、そこで浮き出てきた問題点を改善しておくことは、やはり効果的であると思いますし可能であれば積極的に行っていきたいことでもあります。

とりわけ、SEOを行っていると、しばしば検索エンジンへの最適化に注意しすぎて、ユーザビリティがおろそかになりがちです。バランスの良い意見を求めるということだけでも、ユーザビリティ・テストを導入する価値はあると思います。もちろん、予算を考えつつということにはなるのでしょうけれど。