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MicrosoftとYahoo!の提携が報じられたのは今年の7月末。それ以来、BingのSEOがあちこちで話題にされています。

「Bing SEO」というキーワードで検索すると、既に多くの人がBingのSEOを商売にしようと色々な手段を講じているのを見ることができるわけですが、「良識のあるSEOブログの管理者が、みんな言っているように、パブロフの犬のように条件反射的に、動くのはやめましょう」、「Yahoo!検索で、Bingがどういうかたちで搭載されるか分からない段階で、あれこれBingのSEOを語っても意味がない」、「Bingは正直、まだ未知数と言いますか、私たちが出来ることは限られています […] もうしばらく様子を見たいと思います」といった慎重な意見も少なくありません。

私も、まだあれこれ対策を行ったところで、BingとYahoo!の提携がどういうかたちで落ち着くのか、またその結果、検索エンジンのシェアがどのように変化するのか分からない以上、「ウチはBing SEOは完璧です」などと売り込むことには意味がないと思いますし、例え、現時点でBingに最適化できたとしても、今後様々なかたちでYahoo!とBingそれぞれが技術統合などで不安定化することも考えられるため、最終的にはまた異なるアプローチを行わざるを得ないと考えています。

むしろ、「Bing SEO」は現時点において一種のバズワードになってしまっているというのが現状ではないでしょうか。ただ、それが故に、意外と専門家以外の方々にもBingという名前が広がっており、これまでYahoo!とGoogleのSEOの違いが分からなかったような人でも「Bingはどうなんですか」といった質問を投げてこられます。Bing対策をしても意味が無いと答えることがマイナスに作用することもあります。実際、Google Insights for SearchでもSEO関連ワードとして「Bing」、「Bing SEO」という言葉が検索クエリの急増ワードとして表示されますし、そのことからもBing関連ワードのバズワード化を見ることができます。

Bingは日本版と米国版で異なる

そういった事情もあり、Bingを無視することはできない状況なのですが、Bingといっても「現行の日本の Bing の中身は、これまでの LiveSearch」といわれており、少なくとも現状でBingを見る時には日本版と米国版を個別に見る必要があります。

例えば、すぐに思いつくキーワードとして「SEO」をそれぞれのBingで検索してみると分かりやすいのですが、日本版と米国版ではもちろん、検索結果が大きく異なります。つまりMSNではないBingにおける日本版の検索結果をうかがい知ることはできません。アルファベットで構成されるキーワードは概ねこういった結果になるのではないかと思われます。また、「健康食品」のようなキーワードですと、米国版では中国語(繁体字)が表示されますし、「中古車」では日本語と中国語のページが交じり合った検索結果になります。

また米国版で「Kyoto」のように地名で検索すると「Kyoto Attractions」「Kyoto Resorts」「Kyoto Weather」「Kyoto Map」「Kyoto Restaurants」といったナビゲーションが挿入されます。これらはいわゆる関連検索とは別に表示されオーガニック検索を5件に抑えて、それぞれ3件ずつ表示されるようになっています。これらのサブカテゴリーは決まっているわけではなくアルゴリズムによって決定されるようで、例えば「Osaka」で調べるとまた違った順番、違ったカテゴリーで表示されます。日本版にはこういった機能はありません。

SERP - Kyoto

さらに、これはYahoo.comでも似たようなことができるようになっていますが、米国版で「Google」や「Yahoo」、「Ask」、「Baidu」などで検索すると、それぞれの検索エンジンで検索できる検索窓が表示されます。この検索窓で検索するとそれぞれの検索エンジンの検索結果にダイレクトに移動することができます。もちろん、これもまだ日本版にはない機能です。

SERP - Google

つまり、Bingそのものの雰囲気を味わいたければ米国版を見る必要があるわけですが、米国版で個々のキーワードを検索しても、望ましいかたちで結果が返ってこない。ですからBingを見る場合、日本版でどのような表示をされているかを見つつ、一方で米国版でBingの傾向を調査していかなくてはならないという手間が発生します。アメリカではかなりの勢いで成長しているBingですが、それがいつまで続くのか、また日本でのシェアが今後どうなるのかは分かりませんし、極端な話、苦労が無駄になる可能性は否定できません。

今できるSEO対策とは

これらの事情を踏まえた上で、改めて現時点でできること、知りうることがないのか、というとそういうわけではありません。BingがSEOに関して比較的積極的に開示している情報があり、まずはそれを整理することが必要だと思います。

Webmaster Center

Bingにおけるサイト管理者向けのサイト「Bing Webmaster Center」にその基本的な事柄が紹介されています。その中で総合的なBingの特徴に関しては、「Bing white paper for webmasters & publishers」にまとめられています。

このファイルは一通り見ることをお勧めしますが、フラッシュをスキップする機能がついている、といったことやtitle要素が無い場合、どういう風に処理するのかといったことが23ページに一通りまとめられています。その中で「What do I need to do for SEO with Bing?(BingでSEOをするのに何が必要?)」といった箇所があります。以下に引用します。

[…]adding unique titles and meta descriptions to each page […]. The use of consistent data structures between pages on your website (such as placing similar data between pages using a similar tree structure, similar class names, support standard markup technologies, such as microformats, etc.) […]. Submitting your sitemap to Bing[…].

簡単に訳すと、ユニークなタイトルとメタディスクリプションを各ページに加えること、ツリー構造やクラス名等などのデータ構造をサイト内のページの間で一貫したものにすること、サイトマップを送信すること、などが上げられています。またサイトマップの送信の仕方にも触れられています。

サイトマップの送信

サイトマップの送信の仕方に関しては、以下の2つの方法があるようです。場合によってはやり方を変えたり、併用したりすることもあると思われますし、一応両方を念頭に置いておくといいのではないでしょうか。

  • 一つ目はWebmaster Centerに登録してサイトマップを登録する方法です。GoogleやYahoo!でも基本的な方法は同じですので、特に説明はいらないでしょう。
  • 二つ目はブラウザからダイレクトにサイトマップを送信する方法です。具体的には以下のアドレスの「www.mysite.com/sitemap.xml」(太字)の部分を変更して送信します。

    http://www.bing.com/webmaster/ping.aspx?sitemap=www.mysite.com/sitemap.xml

Bingの検索エンジン最適化原則

また、「Webmaster blog」には「Search Engine Optimization for Bing」というそのもののタイトルで記事が投稿されています。そこでも「Bing’s SEO principles(BingのSEO原則)」として以下の3つが上げられています。

  • Develop great, original content (including well-implemented keywords) directed toward your intended audience
  • Use well-architected code in your webpages (including images and Sitemaps) so that users’ web browsers and search engine crawlers can read the content you want indexed)
  • Earn several, high-quality, authoritative inbound links

つまり、キーワードを含むオリジナルコンテンツを増やすこと、画像やサイトマップを含む適切な構造を持ったウェブページを作ること、品質の良い、権威あるリンクを獲得すること、といったような意味になります。

さらに「Key content and tools for performing SEO with Bing(BingでSEOを行うための重要なコンテンツとツール)」という箇所では、以下の項目が挙げられています。

  • Review the Bing official guidelines for successful indexing document for various recommendations on technical and content issues as well as known problems that can affect your site’s rank
  • Visit the Webmaster Center blog to keep up with the latest information from the team (you can even subscribe to our blog’s RSS feed to automate this process)
  • Register all of your websites with Bing Webmaster Center tools, where you can use our tools to see all sorts of data to your website pertinent to webmasters
  • Participate in our Webmaster Center user forums to ask questions and provide us with feedback

この項目の意味は以下のようになります。

これらは皆、当たり前といっても良いような内容ですが、Bingが(変な言い方になりますが)最適化されたSEOを公に推奨し、サポートしようとしている姿勢が見て取れますし、今後、Bingの性能が向上する上でどのような観点でウェブページを見てくるのか、ということを部分的にせよ知ることができます。

インデックスを成功させるために

先に挙げた「Guidelines for successful indexing」はインデックスを成功させるためのガイドラインとでも訳せばいいのでしょうか、これに関しても一応簡単な説明を付け加えておきます。同ページはインデックスでは以下の3つの項目に分けて説明がされています。

  • Technical recommendations for your website
  • Content guidelines for your website
  • Techniques that might prevent your website from appearing in Bing results

最初のものは「技術的な提案」となっており、W3Cのバリデーション・サービス等を使ってHTMLを適切に記述すること、リンク切れを防ぐこと、リダイレクトを適切に行うこと、クローラーであるMSNBotのアクセスを禁じないこと、Robots.txtや<meta>タグを用いてインデックスさせるページ、させないページを明確にしておくこと、URLをシンプルで静的なものにしておくこと、サイト自体やリンク先がマルウェアに侵されないようにすることなどが挙げられています。

二つ目は、「コンテンツに関するガイドライン」になっています。そこでは、見える形でユーザーが探しているキーワードを配置しておくこと、ページのサイズを150kb程度までに抑えておくこと、それぞれのページを少なくともひとつの静的なアンカーテキストでリンクしておくこと、インデックスさせたいテキストを画像にしないこと、サイトマップを置くこと、サイト階層を深くしすぎないことなどが推奨されています。

三つ目は、altへのキーワードの詰め込み、隠しテキストや隠しリンク、リンクファームなどがスパム行為にあたるということが述べられています。

このように見てくると、Bingが私たちに求めていることは基本的に他の検索エンジンが求めているものとそれほど大きな違いはないと思われます。逆にいうと、これらは常識的な事柄でもあり、適切なSEOを行っている場合、改めて意識しなくてはいけないような事柄ではありません。

気になる人もいるかも知れませんので、付け加えておきますと、一つ目のW3C云々の箇所は、Web標準でなくては駄目だ、とかエラーがあると順位が下がるとか、そういう意味ではないと思われます。少なくともHTMLとして適切に書くことを求めていると解釈すべきでしょう。例えば、タグの閉じ忘れがあったりしないように、と同ページ内にも書かれています。

本当の問題はBingの性能かもしれない

しかし、実際にはこれら公式の発表の通りにやっていても、Bingで順位がなかなか上昇しない、それ以前にインデックスすらされないことがよくあります。Bingのインデックスやそれぞれのページの重みづけ、あるは不可解なランキングなど、既に報告されている問題はたくさんありますが、とりあえず以下にインデックスの問題に関して分かりやすく役に立ちそうな記事を挙げておきます。

これらのことは個人的にも体験しており、実際、私の運営・管理するいくつかのサイトでは、インデックスが非常に限られたものになっていましたし、一部では依然としてそうなったままです。

ある例では、Yahoo!で393件インデックスされている一方で、Bingでは長い間、わずか19件しかインデックスされていませんでした。仕方が無いので、サイトマップを送信することを何度か繰り返したりするうちに、今では197件までインデックスされました。

その結果、対策キーワードでかなり順位を改善することができましたし、どういうわけか、Webmaster Center tools内で表示されるドメイン・スコアやページ・スコア(これらに関しては後述する参考記事を読んでください)も改善されました。

時期的にBingのアルゴリズム調整も影響しているように思われますが、インデックスに成功していないサイトに関しては大きな変化がなかったことから考えると、インデックスを成功させる、というこちらではどうにもならない理由でサイトへの評価が決められてしまっているようです。ガイドラインの充実はもちろん望ましいことですが、最低限こちら側に提案していることをきちんと評価できる仕組みを用意しておいてほしいものです。

これらのことはガイドラインにしたがっていて回避できる問題ではありません。GoogleやYahoo!でも、もちろんこの種の問題はつきまといますが、Bingは特に発展途上ですので、今後も頻繁に起きる可能性はあります。これらの報告などもユーザーフォーラムやその他のSEO関連サイトで注目しておく必要があると思います。

BingのSEO対策に関する参考記事

以上、気が付くと結構長くなりましたが、私なりに2009年9月時点でのBingについてまとめてみました。もちろんBingに関するSEO情報が欲しくてここを読んでいる方はもっと突っ込んだ情報や別の視点からの情報などが欲しいと思われるでしょう。以下に上で言及しなかったものを中心に参考記事を挙げておきます。

まず、Bing日本版とは異なりますが、アメリカを中心に海外ではBingに関する投稿が日々行われています。こちらも日本と同様、Bingに関する情報は玉石混淆といった感じではありますが、中には参考になりそうなものもあります。細かく紹介することはしませんが、以下の投稿などは参考になると思います。

また、Bingの公式サイトWebmaster blogの中でこちらの一連の投稿も非常に役に立つと思われます。英語が苦手な人には辛いかも知れませんが、連載されているものもあり、目を通されることをお勧めします。

日本語で読めるものとしては以下の記事が参考になると思います。

冒頭で書きましたが、Bingが今後どのような形で日本の検索エンジン市場に組み込まれていくのかまだ分かりません。ですが、仕事の関係や個人的な興味などから、今すぐにでも何かしなくてはいけない、あるいはBing+Yahoo!後を睨んで、今から最低限のことをしておきたい、という方も少なくないと思います。ここでまとめた今できるBing対策が何かの参考になれば、と思います。

2009年9月28日追記

参考記事の中で追加し忘れていたものがあったので追記です。日本語記事として、こちらもとても参考になると思いますので、併せて紹介しておきますね。